二度と無い夜
「うちの子中々寝付いてくれないんだよね」
バイトの休憩中、公園でパンを食べている時に出会った主婦は目の前を元気に走り回る子供を眺めながら呟いた。
どこか暗い影かあるが、妙にそれが色っぽかった。
少しふっくらとしているが女性としての魅力は十分に感じる茶髪の彼女は驚いたことに僕と同じ年齢らしい。
その豊満な胸に目を奪われながらも、自分と同じ二十歳そこそこで子供を育てる苦労を想像して自分には理解できないだろうと考えた。
さらに彼女のお腹の中には新しい命が宿っているというのだから驚きだ。
旦那さんは10歳以上年齢が離れていて、同じ年の人と会話がしたかったという。
僕は彼女とメールアドレスを交換すると憂鬱なアルバイトに戻った。
アルバイトの後、心地のいい疲れに包まれながら帰路についていると携帯電話が震えた。
あの若いお母さんからだ。
「これから来ない?」
背徳的な響きを感じる内容だった。
何かを期待してしまいながら、そんな事はないだろうとメールで指定された住所に自転車で向かった。
貧乏アパートに一人暮らしをしている僕からは遠い世界に感じる立派なマンションだった。
家計のことは知らないが、経済的には不自由していないのかもしれない。
ではなぜ、アルバイトなのか?
暇を持て余すとストレスが溜まってくるからだろう。
ストレス解消に、若い獲物を捕まえるのか。
奥さま方の情事
私の住んでいるのは閑静な住宅地です。
ここで知り合ったママ友のお宅で順番にランチをするのが恒例のようで、私の家の順番が今月まわってきます。
親しい方もいれば、まだそんなにお話ししたことのない方もいて、緊張してしまいますが、総勢6人ですので、会話には困らないでしょう。
その中で一番若い奥さんは、まだ28歳です。
20歳の時に結婚し、3人の子供を育てています。
さすがに若いだけあって、独身といっても見えなくはない容姿です。
その奥さんは先月、子宮筋腫の手術を大学病院で受けました。
その話で前半は持ちきりだったのですが、後半はその時に知り合ったインターンの先生の話でもちきりです。
インターンの先生と定期的に食事をする仲らしく、旦那様には内緒でいろいろと相談にのってもらっているようです。
今度、ゆっくり会いたいとインターンの先生に言われたので、どう断ろうか悩んでいる様子でした。
そうこうしているうちに、幼稚園バスの時間だと言って、その奥さんが帰りました。
帰った途端、みんなの豹変ぶりはすさまじいもので、あれは不倫に違いないと、本人がいないのをいいことに、不倫のあらすじが出来上がっていました。
これにはさすがの私も入る気がせず、ひたすらお皿を洗うことに徹していました。