一生懸命なリサーチ
ずっと地元に住んでいるので、新しく出来た話題のお店などはすぐに分かる。
フリーペーパー、グルメ情報紙、情報番組を見ればどんどん紹介している。
他県から来た人にとって、新しい土地でのおいしい飲食店探しは楽しみの一つなのかもしれない。
私にしてはめずらしく、同い年の男の子とデートすることになった。
お店のチョイスはお任せしたが、何が食べたい?と聞かれて、あまり負担をかけないように「焼き鳥がいいな」とだけ要望を出した。
「負担」とは、お支払いのことである。
まだ付き合う前で、しかも同い年。
年上の男性としか食事に行ったことがないので、よく分からないのだが、ごちそうさせてくれと言わんばかりの誘いかただったので、こちらもお言葉に甘えようと思ったのだ。
そんなこんなで、デート当日まで3日ほど経ち、それぞれ仕事が終わってから待ち合わせをした。
お店を探すのに手間取ったけど、仕事の先輩が絶賛していた「隠れ家的な」お店を見つけたから予約したんだ、と彼は言った。
ほうほう、隠れ家的か〜。
焼き鳥屋もたくさんあるから知らない店だろうな〜と思いつつ着いていった。
そしたら、半年前にできたばかりの超有名店だった。
東京に3店舗あって、地方進出1店舗目が地元にできて、こちらでもずいぶん話題になった。
私は親と一度食べにきたことがあって、とってもおいしかった記憶がある。
この彼は転勤で2ヶ月前に東京から来たばかり。
一生懸命なリサーチをしてくれたことを思うと、「まさに隠れ家だね!全然知らなかった!」と言うしかなかった。
食事中も、「うわ〜!おいしそう!」とテンションの高い様子を見せる私。
私の反応を喜んでくれたが、こんな調子じゃ上手くいくはずもない。
変な小芝居をした私だったが、その後、彼と二度目の食事はなかった。