相談なのか誘惑なのか
今でも覚えている。
その夜は本が読めるほど、目の前に人間がいたら表情の子細まで読み取れるほどに明るく大きな、満月が出ている夜だった。
そんな大きな月の下で僕たちは初めて顔を合わせた。
小柄で痩せていて、中々に可愛い女性だった。
年齢は二つ上らしい。
胸は小ぶりだが痩せているだけではなく体型が綺麗で、きっとモテるんだろうなと思わせる女の子だ。
だがそれ以上に目を引いたのは、肌が透けているのではないかと錯覚する程に白く美しいのだ。
アパートについてお茶を飲みながら、僕は彼女の肌の美しさをしきりに褒めた。
それを喜んでくれた彼女は喜んでくれたのか、言いづらいであろう悩みをすんなりと話してくれた。
それは、恋人と初めてのセックスを迎えるにあたって自分の身体は恥ずかしいものではないか?
というものだった。
恥ずかしいことがあるか。
はっきり言って君は美しい部類に入る女性だと言い切れる。
僕は美人でも自分に自信が持てないこともあるのだなと思いながら力説した。
ならばと、彼女は自分の裸体を見てもらえないかと言った。
もちろん驚いた僕はどうしたらいいか分からなかった。
忘れて欲しいバレンタイン
幼稚園の頃からすでにバレンタインデーという概念があったので、2月14日とチョコレートについての思い出がたくさんあります。
気になるのは、あの頃渡したチョコレートのこと、どれくらい覚えているのだろう?ということ。
さすがに小学校までのことは、渡した本人である私もうろ覚えです。
チョコレートを溶かしたボールを洗うのが大変だと母親に愚痴られたことしか記憶がありません。
問題は中学校以降。
数日前から当日のことまで事細かに覚えています。
同窓会で顔を合わせるたびに、お願いだから笑い話として「そういえばチョコレートくれたよね?」と話し出すなよ!と念じてしまいます。
私が忘れて欲しいバレンタインデーの思いでは、中学3年生の2月14日。
ハートのチョコパイを作りました。
簡単で失敗の少ないレシピだったため、とても上手にできて、ラッピングも本を参考にしました。
いつもとは違う2月14日の放課後の雰囲気。
大人気だった男の子に渡して、「またね!」という感じで焦って帰ったのを覚えています。
別に告白したわけでもないのですが、後日第三者を通じて聞いたことにショックを受けました。
美味しかったけど、あれ手作りじゃないよね?ということ。
その男の子と一緒に下校していた男子が、上手く焼けていたパイを見て「お店のパイでしょ、これ!」と言ったそうだ。
そのせいで、私はお店のパイをまるで自分が焼いたようにラッピングして渡した女だと広まりました。
今考えると「違うよ〜!手作り!」と後日なにげなく言えば良かったものの、なんだか茶化されたようでショックを受けました…。
そんな些細なエピソードですが、本人はどれくらい覚えているのか気になります。
諸々のエピソードの記憶がごっそりと無くなっていればいいのに。