スピード婚そして遠距離婚

現在の夫とはスピード婚だった。交際期間は2か月ほど。お互い適齢期後半だったし結婚を焦ってもいたので、渡りに船。よく考えもせず入籍。
一つには彼が出向から前の職場へと突然異動になり、遠距離となったことがある。
遠距離恋愛を持続させるほど、強い恋愛ではない。その自信のなさより、かえって結婚を早まらせた。正直、逃すには惜しい収入と職業。

入籍後3か月ほどは、わたしの仕事の関係で遠距離夫婦を継続した。
その間、本当は結婚前に優先的に済ませるべきだったことを連続的にこなした。
彼の実家訪問。お姑さんとの対面。両家の対面。結納、結婚式、新婚旅行の打ち合わせetc…。
これらを甘く見ていたわたしは徹底して甘かった事実が次第に発覚した。
しょせん結婚とは家同志のつながりであり、新たに発生する家族関係に適応せざるをえない試練でもあったのだ。

彼は高学歴男。その人の育った実家だから、間違いなく教養は高く文化も薫るご家庭でしょう。そう信じて疑わなかったわたしは浅はかだった。
後悔の荒波に流され、募る不安感とともに帰りの遠距離バスは走る。横浜から大阪へ、東から西へ。もっと早く進んで~!!と、攻め入る敵から逃げ帰る気分。
結婚って生涯のものだった。これにようやく気付いたのも、この遠距離バスの車中。なんという愚かな自分。バスは深夜の大阪へと戻ってきた。
あんなに自由闊達だったわたしの独身時代は終わりを告げ、 “夫”は早くも“妻”を束縛し始める。浮気してない?とか、何気にメールをチェックするとか。
強烈なマザコン男かつ軟弱者のくせにさあ…と、先々の惨めなイメージだけが夜中の真っ暗な車窓に次々と浮かぶ。
帰ったら、実家に辿り着いたら。お母さんとお兄ちゃんにこの結婚は間違ってたって、そう言おう。
そうすればすべての悪夢から解放される。遠距離バスはわたしの住む大阪府北部のベッドタウンへとやっとやっと到着し、そして止まった。